X（旧Twitter）採用の運用術｜”中の人”戦略で候補者との距離を縮める方法

X（旧Twitter）を活用した採用は、候補者と直接的な関係を築く新しい手法として注目されています。Xが持つリアルタイム性と拡散力を活かし、「中の人」が企業の魅力を発信することで、候補者との心理的な距離を縮めることが可能です。

この記事では、Xを採用活動に導入するメリットや注意点、具体的な始め方から成功のコツまでを網羅的に解説します。

企業のリアルな雰囲気を飾らずに伝えられる

Xでは、公式サイトや求人情報だけでは伝わりにくい、企業のリアルな雰囲気を候補者に届けられます。例えば、社内イベントの様子や日常的なオフィスの風景、社員同士の何気ないやり取りなどを投稿することで、候補者は社風や働く人々の人柄を具体的にイメージしやすくなります。

飾らない情報を発信することは、候補者が抱く入社後のギャップを減らし、定着率の向上にも貢献します。テキストだけでなく、画像や動画を組み合わせることで、より臨場感のある情報を伝えることが可能です。

潜在的な候補者層にも情報をリーチできる

X採用の大きなメリットは、現在積極的に転職活動を行っていない潜在層にもアプローチできる点です。有益な情報や面白い投稿は、リポストや「いいね」によってフォロワーを超えて拡散されるため、これまで自社を知らなかった層にも認知を広げられます。

そのため、転職サイトに登録していない優秀な人材に自社の存在を知ってもらうきっかけとなり、将来的な採用候補者の母集団形成に役立ちます。有料の広告機能を使わずとも、投稿内容次第で大きなリーチを獲得できる可能性があります。

DMやリプライで気軽にコミュニケーションが取れる

Xは、候補者と企業が気軽にコミュニケーションを取れるプラットフォームです。候補者はDMを使い個別具体的な質問をしたり、投稿へのリプライでカジュアルに疑問を投げかけたりできます。

企業側も、音声でリアルタイムに交流できるスペース機能や、短い動画コンテンツを活用することで、より多角的に企業の魅力を伝え、候補者との相互理解を深めることが可能です。こうした双方向のやり取りを通じて、候補者の不安を解消し、応募へのハードルを下げられます。

採用活動にかかるコストを削減できる

Xのアカウント開設や日々の投稿は無料で行えるため、採用活動にかかるコストを大幅に削減できる可能性があります。従来の採用手法では、求人広告媒体への出稿や人材紹介サービスの利用に高額な費用が発生することが一般的でした。

X採用では、これらの費用をかけずに自社の裁量で情報を発信し、候補者と直接つながることが可能です。採用担当者の人件費や運用工数はかかるものの、外部サービスへの依存度を下げ、コストパフォーマンスの高い採用活動を実現します。

新卒から中途まで幅広い人材にアプローチ可能

Xは10代から50代以上まで、非常に幅広い年齢層のユーザーが利用しているプラットフォームです。そのため、発信する情報の内容や言葉遣いを工夫することで、多様なターゲット層にアプローチできます。

例えば、新卒採用が目的であれば、インターンシップ情報や若手社員のインタビューを中心に発信し、キャリア採用を強化したい場合は、専門的なスキルに関する情報や中途入社した社員の活躍事例を発信するなど、目的に応じた運用が可能です。新卒から即戦力となる中途人材まで、幅広い層にリーチできる点は大きな強みです。

予期せぬ炎上で企業イメージが損なわれるリスク

Xは情報の拡散スピードが非常に速いため、不適切な投稿や配慮に欠ける発言がきっかけで、予期せぬ炎上が発生するリスクが常に伴います。一度炎上すると、ネガティブな情報が瞬く間に広がり、企業のブランドイメージや信頼を大きく損なうことになりかねません。

採用活動にも深刻な悪影響を及ぼすため、投稿前のダブルチェック体制の構築や、SNS運用に関するガイドラインの策定が不可欠です。万が一の事態に備え、専門のクリニックやコンサルタントへの相談窓口を確保しておくといった危機管理体制も検討すべきです。

効果を出すには地道で継続的な投稿が不可欠

X採用で成果を出すには、アカウントを開設して情報を発信するだけでなく、フォロワーとの関係性を構築するための地道で継続的な活動が欠かせません。候補者にとって有益な情報を定期的に投稿し、リプライやDMにも丁寧に対応することで、少しずつ信頼が醸成されます。

単発の投稿で劇的な効果が生まれることは稀であり、日々のコツコツとした積み重ねが重要です。そのためには、運用担当者のリソースを確保し、無理なく続けられる投稿計画を立てることが求められます。

すぐに採用成果が出るとは限らない

X採用は企業の認知度向上やブランディング、ファン作りといった側面が強く、必ずしもすぐに直接的な採用成果に結びつくわけではありません。フォロワーが増え、候補者との良好な関係が構築されるまでには一定の時間が必要です。短期的な応募者数の増加のみを目標にすると、途中で挫折してしまう可能性があります。

まずはエンゲージメント率の向上やフォロワー数の増加といった中間目標を設定し、長期的な視点で運用に取り組む姿勢が大切です。

Step1：採用の目的と求める人物像を明確にする

まず、「なぜX採用を行うのか」という目的を明確に定義します。例えば、「企業の認知度を向上させたい」「特定の職種への応募者を増やしたい」「採用のミスマッチを減らしたい」など、目的によって発信する情報の内容や方向性が変わります。

次に、どのようなスキルや価値観を持つ人材を求めているのか、具体的なペルソナを設定します。例えば、「自社サービスの開発に情熱を注げる若手エンジニア」といったように人物像を具体化することで、ターゲットに響く情報発信が可能になります。

Step2：親近感が湧く”中の人”のキャラクターを設定する

X採用では、企業が公式に発信する堅苦しい情報よりも、採用担当者など「中の人」の個性が見える投稿が好まれる傾向にあります。候補者が親近感を抱き、気軽にコミュニケーションを取りたいと思えるようなキャラクターを設定することが重要です。

例えば、「少しおっちょこちょいだけど仕事熱心な人事」や「技術的な質問に丁寧に答えてくれる先輩エンジニア」など、人間味のあるキャラクターを確立することで、企業との心理的な距離が縮まり、エンゲージメントが高まります。

Step3：採用専用アカウントを作成しプロフィールを充実させる

企業の公式アカウントとは別に、採用に特化した専用のアカウントを作成することをおすすめします。アカウント名やIDは、企業名と「採用」を組み合わせるなど、目的がひと目でわかるものが望ましいです。プロフィール欄には、事業内容やビジョン、募集中の職種、企業のカルチャーが伝わる紹介文を記載しましょう。

アイコンやヘッダー画像も、オフィスの様子や社員の集合写真など、親しみやすいものに設定し、採用サイトへのリンクを必ず掲載して、興味を持ったユーザーを誘導できるようにします。

Step4：候補者が知りたい情報をハッシュタグ付きで発信する

候補者が本当に知りたいのは、求人票の条件だけではありません。実際に働く社員の声や一日の仕事の流れ、福利厚生の詳細、社内の雰囲気など、リアルな情報を積極的に発信することが重要です。

投稿の際には、「#26卒」「#中途採用」「#エンジニア募集」といった採用関連のハッシュタグや、業界・職種に関連するハッシュタグを効果的に活用しましょう。これにより、特定のキーワードで情報収集している意欲の高い候補者に投稿を見つけてもらいやすくなります。

Step5：自社の採用サイトへ誘導する導線を設計する

Xでの情報発信は、あくまで候補者との接点作りや関係構築の手段です。最終的なゴールである「応募」につなげるためには、自社の採用サイトや募集要項ページへのスムーズな導線を設計することが不可欠です。

プロフィール欄に採用サイトのURLを記載するのはもちろん、関連する投稿の末尾にもリンクを添えましょう。また、固定ポスト機能を使って、現在最も注力している募集ポジションの情報を常にトップに表示させておくことも有効な手段です。

候補者の役に立つ有益な情報を定期的に発信する

自社の求人情報や宣伝ばかりを発信するアカウントは敬遠されがちです。フォロワーとの長期的な関係を築くためには、候補者のキャリア形成に役立つ情報や、業界の最新トレンド、面接で役立つノウハウなど、有益なコンテンツを定期的に発信することが重要です。

こうした価値提供を続けることで、アカウントの専門性や信頼性が高まり、採用市場における自社のプレゼンス向上にもつながります。結果として、有益な情報を求めてフォローしてくれる質の高い候補者層が集まります。

親しみやすい言葉遣いでDMやリプライに素早く返信する

X上でのコミュニケーションでは、堅苦しいビジネス用語を多用するよりも、中の人の人柄が伝わるような、親しみやすく丁寧な言葉遣いが好まれます。候補者から寄せられたDMやリプライには、可能な限り迅速に、そして誠実に対応することが信頼関係の構築につながります。

一つひとつのやり取りを大切にすることで、「この会社は候補者に真摯に向き合ってくれる」というポジティブな印象を与え、候補者のエンゲージメントを高める効果が期待できます。

投票機能などを活用して双方向のコミュニケーションを促す

Xの運用は、企業からの一方的な情報発信に陥らないように注意が必要です。Xに備わっている投票機能や質問箱（外部サービス連携）などを活用し、フォロワーの意見を聞いたり、質問を募集したりすることで、双方向のコミュニケーションを活性化させましょう。

また、音声でリアルタイムの座談会や質疑応答ができるスペース機能を活用するのも有効です。候補者を巻き込んだ企画を実施することで、アカウントへの参加意識を高め、エンゲージメントの向上を図ります。

発信する情報に一貫性がなく候補者が混乱してしまう

複数の担当者でアカウントを運用する場合や、明確な運用方針が定まっていない場合に、発信内容のトーン＆マナーや企業の魅力の伝え方に一貫性がなくなることがあります。ある日はカジュアルな投稿、次の日は非常にフォーマルな投稿といったように、発信の軸がぶれていると、候補者は企業に対してどのようなイメージを持てばよいか混乱してしまいます。

これを避けるためには、事前にペルソナやアカウントのキャラクター設定、投稿のガイドラインを明確に定めておくことが重要です。

宣伝ばかりの投稿でフォロワーが離れてしまう

Xは情報収集やコミュニケーションの場として利用するユーザーが多く、広告色の強いコンテンツは好まれない傾向があります。求人情報や自社のサービスの宣伝ばかりを繰り返していると、ユーザーに「売り込みが強い」という印象を与え、フォローを外されてしまう原因になります。

採用につなげたいという気持ちは重要ですが、まずは候補者の役に立つ情報や、共感を呼ぶような社内の日常風景などを発信し、信頼関係を築くことを優先すべきです。宣伝投稿は全体の2割程度に抑えるなど、バランスを意識することが求められます。

投稿ネタが尽きてしまいアカウントが放置状態になる

X採用は継続が力となるため、アカウントの放置は最も避けたい失敗の一つです。しかし、日々の業務に追われる中で投稿のネタ探しに苦労し、結果的に更新が滞ってしまうケースは少なくありません。

投稿が途絶えたアカウントは、候補者に「採用活動に力を入れていないのではないか」というネガティブな印象を与えかねません。これを防ぐためには、事前にコンテンツカレンダーを作成して投稿計画を立てたり、社内の各部署に協力を仰いでネタを集める仕組みを構築したりするなど、継続的に運用できる体制を整える工夫が必要です。