記事公開日 :  2025/09/30

圧迫面接は内定辞退に直結……人事が知るべきリスクと対策

圧迫面接は内定辞退に直結……人事が知るべきリスクと対策

圧迫面接は、応募者のストレス耐性を見極めるという名目で行われることがありますが、実際には採用辞退や企業イメージの悪化に直結する危険な行為です。面接官の無意識な言動が、応募者に圧迫感を与えているケースも少なくありません。

この記事では、圧迫面接が企業にもたらす具体的なリスクを解説し、応募者の本音を引き出すための面接改善策を提案します。さらに人事担当者や面接官が知るべきポイントを整理し、採用活動の質を高める一助とします。

応募者が内定を辞退する原因は圧迫面接かもしれない

内定辞退が続く場合、その原因は待遇や業務内容だけでなく、選考過程での体験にあるかもしれません。特に面接は、応募者が企業を直接知る重要な機会であり、面接官の対応が入社意欲を大きく左右します。

高圧的な態度や否定的な言動は、応募者に「この会社では尊重されない」という印象を与え、たとえ内定を得たとしても、入社をためらわせる十分な理由となります。応募者は企業の将来性だけでなく、働く「人」を見ており、面接での不快な経験が最終的な辞退の決定打になる可能性を認識すべきです。

圧迫面接がもたらす企業側の4つのリスク

圧迫面接は、採用活動における機会損失にとどまらず、企業経営にまで影響を及ぼす重大なリスクをはらんでいます。応募者の入社意欲を削ぎ、優秀な人材の採用辞退を招くだけではありません。SNSなどを通じて悪評が拡散すれば、企業全体のブランドイメージが著しく低下します。これにより、将来的な応募者の減少や、最悪の場合、法的措置に発展する可能性も否定できません。

これらのリスクは相互に関連し合い、企業の持続的な成長を阻害する要因となり得ます。

1.優秀な人材を逃す採用辞退率の増加

圧迫面接を受けた応募者は、たとえ選考を通過し内定を得たとしても、企業に対して強い不信感や不快感を抱きます。その結果、入社意欲が著しく低下し、内定辞退を選択する可能性が非常に高くなります。特に、複数の企業から内定を得ているような優秀な人材ほど、より自分を尊重し、良い印象を与えてくれた企業を選ぶ傾向が強いです。

圧迫面接によって貴重な候補者を逃すことは、採用活動にかけた時間とコストを無駄にするだけでなく、企業の競争力低下に直結する大きな損失となります。

2.SNSでの拡散による企業イメージの悪化

現代において、個人の体験はSNSを通じて瞬時に広範囲に拡散されます。圧迫面接を受けた応募者がその不快な体験をSNSに投稿した場合、企業の評判は短時間で大きく損なわれる可能性があります。「ブラック企業」や「パワハラ体質」といったネガティブなレッテルが貼られ、一度悪化したブランドイメージを回復することは容易ではありません。

こうした悪評は、採用活動だけでなく、企業の製品やサービスの顧客離れにもつながる可能性があり、事業全体に深刻なダメージを与えるリスクをはらんでいます。

3.将来の応募者減少につながる悪い口コミ

圧迫面接に関する情報は、SNSだけでなく、就職・転職活動者向けの口コミサイトにも記録として残ります。

多くの求職者は、企業に応募する前に、こうしたサイトで企業の評判や選考に関する情報を収集することが一般的です。そこに「高圧的な面接官がいた」「人格を否定された」といった書き込みがあれば、それを見た他の候補者は応募をためらうでしょう。結果として、企業の採用母集団が減少し、長期的に優秀な人材を確保することが困難になるという悪循環に陥る危険性があります。

4.法的措置や行政指導を受ける可能性

圧迫面接における言動が、応募者の人格を否定したり、個人の尊厳を傷つけたりするレベルに達した場合、それは単なる不適切な行為ではなく、違法行為とみなされる可能性があります。

例えば、発言内容がパワーハラスメントや就職差別に該当すると判断されれば、応募者から損害賠償を求める訴訟を起こされるリスクがあります。また、職業安定法に抵触するような不適切な質問があった場合、厚生労働省から行政指導を受ける事態にもなりかねません。法的なトラブルは、金銭的な損失以上に企業の社会的信用を大きく失墜させます。


無意識かも?応募者に圧迫と感じさせる面接官の態度

面接官自身に圧迫する意図がなくても、無意識の態度や仕草が応募者に威圧感や疎外感を与えている場合があります。腕組みや貧乏ゆすりといった威圧的な姿勢、無表情や相づちを打たない無関心な対応は、応募者を萎縮させ、本来の力を発揮できなくさせます。特にオンライン面接では、些細な行動がより強くネガティブな印象として伝わりやすいため注意が必要です。

面接官は、自身の言動だけでなく、非言語的な態度が相手に与える影響を常に意識することが求められます。

腕組みや貧乏ゆすりなどの威圧的な姿勢

面接官が腕を組んだり頬杖をついたりする姿勢は、応募者に対して拒絶的あるいは尊大な印象を与えかねません。本人は無意識に考え事をしているだけかもしれませんが、相手からは話を聞く気がない、見下している、といったメッセージとして受け取られる可能性があります。

同様に貧乏ゆすりやペンを回すといった癖も落ち着きのなさや不誠実さの表れと見なされ応募者の不安を煽ります。面接という緊張感のある場ではこうした無意識の行動が応募者の心理に与える影響は大きく対等なコミュニケーションを妨げる要因となります。

無表情や相づちを打たないなどの無関心な対応

応募者が一生懸命に話しているにもかかわらず、面接官が一切表情を変えず、うなずきや相づちなどの反応を示さない場合、応募者は強い疎外感を覚えます。「自分の話に興味がないのだろうか」「否定的に評価されているのではないか」といった不安から、次第に話す意欲を失ってしまうでしょう。

このような無関心な態度は、応募者の心理的な安全性を脅かし、萎縮させる原因となります。結果として、応募者は本来の自分を表現できなくなり、企業側も候補者の本質や潜在能力を見抜く機会を失うことになります。

オンライン面接で特に注意したい点

オンライン面接は、対面に比べて相手の表情や雰囲気が伝わりにくい特性があります。そのような状況で、面接官がカメラをオフにしたり、頻繁に視線をパソコンの画面外にやったりすると、応募者は自分が軽んじられていると感じやすくなります。

応募者の意欲を削ぐ圧迫面接とみなされる言動例

応募者のストレス耐性を見極める目的であっても、手法が不適切であれば圧迫面接とみなされ、逆効果となります。候補者の経験や意見を頭ごなしに否定したり、人格を侮辱するような発言をしたりする行為は、応募者の尊厳を傷つけ、入社意欲を著しく低下させます。

また、答えに詰まるまで執拗に質問を繰り返したり、一方的に説教をしたりする行為も、建設的な対話を妨げる典型的な圧迫面接の言動です。これらの行為は、候補者の本質を見極める上で何ら有効ではありません。

応募者の経験や意見を頭ごなしに否定する

あなたのその考えは甘い、その経験は当社では全く役に立たないといったように、応募者が語る経験や意見を一方的に否定する言動は、圧迫面接の典型例です。たとえ企業の価値観や方針と異なっていたとしても、まずは相手の考えを受け止め、傾聴する姿勢が不可欠です。

頭ごなしの否定は、応募者の自尊心を傷つけ、対話の機会を閉ざしてしまいます。これでは、応募者の思考の柔軟性や異なる意見に対する対応力など、本来見極めるべき資質を評価することはできません。相互理解の場であるべき面接が、一方的な批判の場になってしまいます。

人格や能力を侮辱するような発言

本当に仕事ができるのか疑問だ、この程度のことも答えられないのかなど、応募者の人格や能力そのものを貶めるような発言は、決して許されるものではありません。これは単に失礼なだけでなく、パワーハラスメントに該当する可能性のある深刻な問題です。

面接は、応募者のスキルや経験が自社の求める要件に合致するかを判断する場であり、応募者の人間性を評価したり、侮辱したりする場ではありません。このような言動は、応募者に深い精神的苦痛を与え、企業の倫理観そのものを疑わせる原因となります。

答えに詰まるまで執拗に質問を繰り返す

応募者の回答に対して、「なぜ?」「それで、具体的には?」といった質問を、相手を追い詰めるように繰り返す行為は、有効な深掘りではなく圧迫面接です。物事の本質を探るための質問は重要ですが、相手を意図的に困らせたり、思考停止に追い込んだりすることが目的となってはいけません。

このような詰問は、応募者に過度な精神的負荷をかけるだけで、本来のパフォーマンスを引き出すことを妨げます。結果として、冷静な状況であれば答えられたはずの質問にも答えられなくなり、企業側も候補者を正しく評価する機会を失います。

回答に対してダメ出しや説教をする

応募者の回答に対し、「そのやり方では社会では通用しない」とダメ出しをしたり、自社の価値観を一方的に押し付けるような説教を始めたりする行為は、面接官が優位な立場を濫用していると見なされます。

面接は、面接官が応募者を指導したり教育したりする場ではなく、あくまで対等な立場で相互理解を深める場です。高圧的な態度で応募者を論破しようとする行為は、企業の硬直的な組織風土や、多様な意見を受け入れない体質を示唆するものとして、応募者にネガティブな印象を与え、入社意欲を大きく削いでしまいます。


圧迫面接を防ぎ、応募者の本音を引き出すための改善策

圧迫面接をなくし、応募者が安心して自身の能力や人柄を伝えられる環境を構築することは、採用の成功に不可欠です。そのためには、面接官個人の意識改革だけでなく、組織全体での取り組みが求められます。面接の目的と評価基準を明確にし、全担当者で共有することが第一歩です。

さらに、応募者を尊重し、対等な立場で対話する姿勢を基本とし、面接官トレーニングを通じてスキルを標準化することで、属人的な問題の発生を防ぎ、採用活動全体の質を向上させることが可能となります。

応募者を尊重し対等な立場で対話する意識を持つ

採用面接は、企業が応募者を選ぶだけでなく、応募者が企業を選ぶ対等なコミュニケーションの場であるという認識を全ての面接官が持つべきです。応募者を将来の仲間となる可能性があるパートナーとして捉え、敬意を払った態度で接することが基本です。

相手の話を遮らず最後まで丁寧に聞く「傾聴」の姿勢は、信頼関係を築く上で不可欠となります。このような対等な関係性があって初めて、応募者は心理的な安全性を感じ、リラックスして本音を話すことができます。
この相互尊重の精神が、ミスマッチのない採用の土台を築きます。

面接の目的と評価基準を事前に明確化する

圧迫面接は、面接の目的が曖昧であったり、評価基準が面接官の主観に委ねられていたりする場合に起こりやすくなります。

これを防ぐためには、面接開始前に「この面接で何を確認するのか(目的)」「どのような点を、どういった基準で評価するのか(評価基準)」を具体的に定め、全ての面接官で共有しておくことが極めて重要です。基準が明確であれば、面接官はそれに沿った客観的な質問に集中できるため、感情的になったり、意図の不明な質問で応募者を追い詰めたりするリスクを大幅に低減できます。

ストレス耐性を測るための適切な質問方法を学ぶ

応募者のストレス耐性を確認したい場合でも、高圧的な質問を用いる必要はありません。より効果的かつ適切な方法として、過去の経験に基づいて行動特性を評価する「構造化面接」の手法が推奨されます。

例えば、「これまでの仕事で直面した最も困難な状況は何か、そしてそれにどう対処したか」といった質問を投げかけます。これにより、応募者を不快にさせることなく、過去の具体的な事実から、ストレスフルな状況下での思考パターンや行動様式を客観的に把握することが可能となります。

面接官トレーニングを実施しスキルを標準化する

多くの圧迫面接は、面接官のスキル不足や知識不足、あるいは無意識の偏見から生じます。これを組織的に防ぐためには、面接官を対象とした定期的なトレーニングの実施が不可欠です。

トレーニングでは、圧迫面接のリスクや関連法規、適切な質問の仕方、傾聴の技法などを学びます。また、ロールプレイングを通じて実践的な面接スキルを養い、フィードバックを行うことで、面接官ごとの質のばらつきをなくし、企業全体として面接のレベルを標準化することが重要です。

まとめ

圧迫面接は、採用辞退、企業イメージの低下、将来の応募者減少、さらには法的リスクといった、企業経営に深刻な悪影響を及ぼします。面接官の無意識な態度や言動が、意図せずして応募者に圧迫感を与えているケースも少なくありません。

これを防ぐためには、応募者を対等なパートナーとして尊重する意識を基本とし、面接の目的と評価基準を明確化することが不可欠です。組織的な面接官トレーニングを通じてスキルを標準化し、面接の質を向上させることが、優秀な人材を獲得し、企業の持続的な成長を支える基盤となります。

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