記事公開日 :  2026/04/10

最終更新日 : 2026/04/30

フリーランス新法とは?背景や内容まで徹底解説

フリーランス新法とは?背景や内容まで徹底解説

フリーランス新法とは、2024年11月1日から施行された法律です。多様な働き方が広がる中で、立場の弱いフリーランスが不当な扱いを受けることを防ぐために制定されました。この法律は、企業とフリーランスの間の取引を公正にし、個人が安心して働ける環境を整えることを目指しています。主な内容は、取引条件の明示を義務付ける「取引の適正化」と、育児・介護との両立支援やハラスメント対策を求める「就業環境の整備」の二柱で構成されています。

これまでは下請法などの対象外だったケースも広くカバーされるため、発注側と受注側の双方が正しい知識を持つことが求められます。以下の小見出しでは、法律が目指す具体的な目的について詳しく解説します。


フリーランス新法とは

目的

フリーランス新法は、正式名称を「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」といい、フリーランスが安定的に働ける環境を整備するために制定されました。近年、働き方の多様化が進む一方で、組織に属さないフリーランスは発注者との交渉力に差があり、報酬の未払いやハラスメントなどのトラブルに遭いやすい実態がありました。

このような背景から、取引の適正化と就業環境の整備を目的としたルールが明確に定められています。これまでは下請法などの既存の法律ではカバーしきれなかった取引に対しても、広く適用される点が大きな特徴です。以下では、本法が具体的にどのような目的を掲げているのかについて詳しく解説します。

目的

フリーランス新法が制定された主な目的は、発注事業者との取引を適正化し、フリーランスが安定して働ける就業環境を整備することにあります。組織に属さないフリーランスは、発注者に対して立場が弱くなりやすく、報酬の未払いや一方的な内容変更といったトラブルに直面するケースが少なくありません。こうした格差を是正するため、法律によって発注側に義務や禁止事項を課し、双方が対等な立場で公正な取引を行える仕組みを構築します。

さらに、育児や介護との両立支援、ハラスメントの防止措置などを義務付けることで、個人が能力を最大限に発揮し、安心して業務に専念できる社会環境を実現することを目指しています。

設立された背景

フリーランス新法の設立された背景には、働き方の多様化に伴い、組織に属さない個人が発注者との交渉力の差から不当な扱いを受けるケースが急増した実態があります。具体的には、仕事が完了したにもかかわらず報酬が期日に支払われないことや、事前の合意なく一方的に報酬を減額されるといったトラブルが後を絶ちませんでした。また、発注者の都合による急な仕様変更や追加作業に対して、正当な対価が支払われないまま対応を強いられる事例も多く報告されてきました。

これまでの下請法などの既存法律では、資本金要件や業種の制限により、こうした個人の被害を十分に救済できない限界がありました。そのため、フリーランスが取引上の不利益を被ることなく、対等な立場で安心して働ける法的基盤を整える必要性が高まったことが、今回の新法施行の大きな要因です。

フリーランス新法における「フリーランス」の定義

フリーランス新法における特定受託事業者、いわゆるフリーランスの定義は、業務委託の相手方となる事業者であり、かつ従業員を雇用していない者とされています。具体的には、個人で活動するフリーランスはもちろん、法人化していても従業員を雇わず自分一人で事業を行う一人社長も含まれます。

この法律が適用されるのは、事業者間の取引であるBtoBの形態に限られます。そのため、一般消費者から直接依頼を受けるケースや、従業員がいないフリーランス同士の取引は対象外です。また、売買契約など業務委託に該当しない取引も含まれません。対象となる職種に制限はなく、ライターやエンジニア、デザイナー、さらには店舗を持たないインストラクターなど、幅広い業種が保護の対象となります。自身の事業形態が従業員を雇用していない状況であれば、この定義に合致すると判断されます。

フリーランス新法における発注側企業の定義

フリーランス新法において、発注側は「特定業務委託事業者」と定義されています。これは、フリーランスに業務委託を行う事業者のうち、一人以上の従業員を雇用している者を指します。ここでいう従業員には、フルタイムの正社員だけでなく、週の労働時間が長く継続的に雇用されているパートタイムやアルバイトも含まれる点に注意が必要です。

また、法人の形態を取らずに個人事業主として活動している場合でも、従業員を一人でも雇っていれば特定業務委託事業者に該当します。一方で、従業員を一切雇用せず一人で事業を営む者が、他のフリーランスへ業務を再委託するようなケースは「特定受託事業者」同士の取引となり、義務の内容が限定されます。

自社がどの区分に属するかによって、取引条件の明示義務だけでなく、ハラスメント対策や育児・介護への配慮といった就業環境の整備に関する義務の範囲が変わります。そのため、まずは自社の雇用状況を正確に把握し、法的な定義に照らし合わせることが不可欠です。


発注側に求められる対応

フリーランス新法では、発注事業者が守るべきルールとして7つの義務が明確に定められました。これらは大きく、取引を適正に行うための規定と、就業環境を整えるための規定の二つに分けられます。発注側はこれらの項目を正しく理解し、自社の業務フローや体制を法律に適合させる必要があります。各義務の具体的な内容は以下の通りです。

【1】書面などによる取引条件の明示

口頭で契約内容について伝えるのではなく、書面などによる取引条件の明示が義務づけられます。フリーランスに業務委託をした場合、書面または電磁的方法(メッセージなど)を用いて取引条件を明示しなければなりません。

 <明示事項>
 ・給付の内容
 ・報酬の額
 ・支払期日
 ・業務委託事業者・フリーランスの名称
 ・業務委託をした日
 ・給付を受領する日/役務の提供を受ける日
 ・給付を受領する場所/役務の提供を受ける場所
 ・(検査をする場合)検査完了日
 ・(現金以外の方法で報酬を支払う場合)報酬の支払方法に関して必要な事項

取引条件を書面・電磁的記録で残すことで、トラブルを未然に防げるでしょう。

【2】報酬支払期日の設定・期日内の支払い

発注側は、フリーランスから物品等を受け取った日から数えて60日以内のできる限り短い期間内で、報酬の支払期日を設定しなければなりません。この支払期日は、当事者間で合意した日になりますが、法律で定められた上限を超えて設定することは禁止されています。

また、定められた期日までに確実に報酬を支払うことも義務付けられています。もし納品物の検査を行う場合であっても、支払期日は「納品日」を起点として計算される点に注意が必要です。検査の完了日に関わらず、60日という期間制限は維持されます。再委託の場合には、元請け企業から支払いを受ける日から30日以内という例外的なルールが適用されます。いずれのケースにおいても、発注側の都合で支払いを遅延させることは認められず、迅速な決済が求められます。

【3】7つの禁止行為が定められる

フリーランスに対して1ヶ月以上の業務を委託した場合には、以下7つの行為が禁止されています。

 ・受領拒否(注文した物品または情報成果物の受領を拒むこと)
 ・報酬の減額(あらかじめ定めた報酬を減額すること)
 ・返品(受け取った物品を返品すること)
 ・買いたたき(類似品等の価格または市価に比べて、著しく低い報酬を不当に定めること)
 ・購入・利用強制(指定する物・役務を強制的に購入・利用させること)
 ・不当な経済上の利益の提供要請(金銭、労務の提供等をさせること)
 ・不当な給付内容の変更・やり直し(費用を負担せずに注文内容を変更し、または受領後にやり直しをさせること)

【4】募集情報の的確表示が義務付けられる

発注事業者が求人サイトやSNS、自社サイトなどでフリーランスを募集する際は、情報の正確性を保つ義務があります。具体的には、実際とは異なる報酬額を提示したり、好条件を装って集客したりする虚偽の表示や、重要な事項を伏せて誤解を招くような表現をすることが禁止されています。

また、募集内容は常に最新の状態へ更新し、情報の鮮度を維持しなければなりません。募集を終了した案件を掲載し続けたり、決定した条件と異なる内容で放置したりすることは避け、的確な情報提供を行う必要があります。これにより、フリーランスが不適切な情報に基づいて応募や契約を行うリスクを防ぎ、透明性の高いマッチングを促進します。

【5】育児介護等と業務の両立に対する配慮

フリーランスに対して6ヶ月以上の期間にわたる業務委託を行っている場合、発注者は相手方の育児や介護など、家庭の事情と業務が両立できるよう必要な配慮を行うことが義務付けられています。具体的な対応としては、フリーランスからの申し出を受け、個別の状況に応じた柔軟な措置を検討することが求められます。例えば、通院や送迎が必要な時間帯を避けて打ち合わせを設定することや、出社を前提とせずオンラインでの業務遂行を認めることなどが含まれます。

ただし、この義務は発注側の体制や業務の性質上、可能な範囲での配慮を求めるものです。過度な負担を強いるものではありませんが、双方が納得できる形で合意形成を図り、個人の能力を十分に発揮できる体制を整えることが大切です。

【6】ハラスメント対策に関する体制を整備する

特定業務委託事業者は、フリーランスがハラスメントによって就業環境を害されることがないよう、必要な体制を整備しなければなりません。具体的には、自社の従業員がフリーランスに対してパワーハラスメントやセクシュアルハラスメント、妊娠・出産等に関するハラスメントを行うことを防ぐための措置を講じる必要があります。

具体的な対応として、まずハラスメント防止の方針を明確にし、従業員への周知啓発や研修を実施することが求められます。あわせて、フリーランスからの相談に適切に対応するための窓口を設置し、相談者のプライバシー保護や不利益な扱いの禁止を徹底する体制を整えなければなりません。実際に問題が発生した場合には、事実関係を迅速かつ正確に確認し、被害者への配慮や再発防止策を講じることが義務付けられています。企業規模に関わらず、フリーランスが安心して業務に専念できる環境作りは、現代の取引における不可欠な責務です。

【7】中途解除等の事前予告・理由開示を行う

フリーランスに対して6ヶ月以上の継続的な業務委託を行っている場合、発注側は契約を中途解除したり、契約更新を行わなかったりする際に、少なくとも30日前までにその旨を予告する義務があります。これにより、フリーランスが次の案件を探すなど、急な契約終了による収入断絶のリスクに備えるための猶予期間を確保します。災害などやむを得ない事情がある場合を除き、事前の通告なしに一方的に契約を打ち切ることは認められません。

また、予告を受けたフリーランスから解除の理由について開示を求められた場合、発注者は遅滞なくその理由を回答しなければなりません。理由は、契約違反やパフォーマンスの不足、事業縮小など、客観的で具体的な内容である必要があります。不当な理由による切り捨てを防ぎ、取引の透明性を高めることで、個人が不利益を被ることなく納得感を持って業務を終了できる環境を整えます。

フリーランス新法と下請法の違い

フリーランス新法と下請法は、どちらも取引の適正化を目的とした法律ですが、適用範囲の決定方法に明確な違いがあります。下請法では、発注側と受注側の資本金の額によって適用対象かどうかが決まる「資本金要件」が設けられています。これに対し、フリーランス新法には資本金による制限がなく、発注側の従業員の有無や、受注側が従業員を雇用していないという実態に基づいて適用が判断されます。

この違いにより、下請法の対象外だった小規模な企業との取引や、特定の業種に限定されない幅広い業務委託が保護されるようになりました。以下では、両法の具体的な相違点について詳しく解説します。

最大の違いは資本金要件の有無

下請法との最も大きな違いは、適用範囲を決定する際の基準にあります。下請法では発注側と受注側の資本金の規模によって適用対象かどうかが決まる「資本金区分」が設けられており、一定額を下回る取引は保護の対象外でした。一方、フリーランス新法には資本金による制限が一切ありません。発注側が従業員を一人でも雇用していれば、企業の規模や資本金の多寡に関わらず法律が適用されます。このため、これまで下請法ではカバーしきれなかった小規模な事業者との取引においても、フリーランスの権利が守られるようになりました。

また、建設業などの特定の業種に限定されず、あらゆる業界の業務委託が対象となる点も特徴です。なお、一つの取引が下請法と新法の両方の要件を満たす場合は、原則として新法の内容が優先されます。


フリーランス側が知っておくべき準備と対策

フリーランス新法の施行により、受託者側も自身の身を守るための積極的な対応が求められます。この法律はフリーランスの立場を保護するものですが、その恩恵を十分に受けるためには、まず自分自身が「特定受託事業者」に該当するかを確認し、法律の適用範囲を正しく理解しておくことが重要です。

発注者から提示される条件が法律に適合しているかを自ら判断できるよう、具体的な義務や禁止事項の知識を身につけましょう。また、万が一トラブルが発生した際に、どの行政機関や相談窓口を利用すべきかを事前に把握しておくことも有効な対策です。以下では、実務においてフリーランスが取り組むべき具体的な準備について解説します。

既存の契約書や発注書の内容を見直す

フリーランス新法の施行に伴い、まずは現在使用している契約書や発注書のひな形を詳細に点検することが重要です。特に報酬の支払期日が「納品から60日以内」のルールに適合しているか、業務内容や対価が不明確なままになっていないかを確認してください。また、発注側からの不当な減額や返品を強いるような条項が含まれていないかも精査すべき項目です。自身が発行する見積書や請求書においても、あらかじめ納期や支払期限を法律の基準に沿って明記するよう習慣づけましょう。

契約内容の透明性を高めることは、自分自身の権利を守るだけでなく、取引先との不要なトラブルを未然に防ぐことにつながります。法律を正しく理解し、契約実務の改善に主体的に取り組む姿勢が求められます。

フリーランス新法との向き合い方

フリーランス新法における、遵守すべき義務や禁止事項を正しく守らないと、発注業者は行政の調査を受けることになります。その際に指導・助言を受けたり、必要な措置を取るよう勧告されますが、これに従わない場合は命令・企業名公表が行われます。さらには命令に従わない場合、罰金が課せられるので注意しましょう。

 <フリーランス新法との向き合い方>
 ・契約書や募集内容のフォーマットを作る
 ・フリーランスの就業環境を意識し、体制整備を改める
 ・マニュアルを配布するなど、同法を社内に周知する
 ・同法に遵守することを社外に対して発信する
 ・疑問があれば公正取引委員会や厚生労働省に問い合わせる

上記は一例ですが、しっかりとフリーランス新法について理解をし、ビジネスパートナーとしてより良い関係性を築けるよう工夫をしていきましょう。

さいごに

公正取引委員会は、フリーランス新法に関する特設サイトを設置。ポップなイラストや「あるあるチェック」といったコンテンツを交えながら、フリーランス・事業者の両者に向けてわかりやすく解説しています。

◇校正取引委員会フリーランス法特設サイト
https://www.jftc.go.jp/freelancelaw_2024/index.html
両者がフリーランス新法に対する理解を深め、トラブル防止に努めることが重要です。「自分は対象者なのか?」「この対応でいいのだろうか」と不安を抱えている場合には、専門家への相談もおすすめします。事業者側がフリーランス新法に違反した場合、関係省庁による指導や勧告などの措置が行われる場合があります。社内全体で情報を共有し、法令順守を徹底しましょう。

◇フリーランス・トラブル110番(フリーランス向け相談窓口)
https://freelance110.mhlw.go.jp/


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